健康ブームと鉄玉子

鉄玉子

卵?

先日ご来店されたお客さまから、

「玉子あるかしら?」

「卵?」

一瞬ポカンとしましたが、

「鉄の玉子よ。この間テレビでやってたの。鍋とかヤカンに入れると鉄分が摂れて貧血とかに良いんですって。」

 

鉄器から鉄分補給はできるのか?

昔から鉄瓶などで沸かしたお湯には鉄分が溶け出すので、鉄分補給には最適だと言われてきました。

しかし、近年の景品表示法や薬事法とかで、医薬品ではないもので医学的効能を謳ってはいけないというような話を聞いて以来、ホームページではアピールを控えていました。鉄瓶で鉄分が摂取できるのも明確なエビデンスが無いという噂もありました。

 

ところが、何年か前の新聞記事に国産のひじきに含まれる鉄分が減少しているという報道がありました。原因は加工の仕方が変わったからでした。以前はひじきを煮る際に鉄鍋が使わていたのですが、近年はステンレス製になったために鉄分の含有量が減ったというのです。つまり、貧血予防に良いとされたひじきそのものに鉄分があるのではなく、鉄鍋で煮る時に鉄分が加わったことになります。

 

テレビのチカラは絶大

当店では南部鉄瓶を扱っているので、鉄玉子はお取り寄せ可能でしたが、テレビで取り上げられたため在庫が無くなり入荷はかなり先になりました。

健康ブームとはいえ、すごいですね。詳しく伺うとNHKの「ためしてガッテン」で取り上げたようで、テレビ、とりわけNHKの影響力は絶大だと実感しました。あれにはどんなインフルエンサーも太刀打ちできません。

 

サビとニオイ

ネットで調べるとすでに購入された方の意見が散見され、貧血が改善した、買って良かったという感想がある一方、けっこう多いのが「すぐ錆びる」「鉄臭い」というネガティブな意見。ブームに乗って飛びついたものの、がっかりしたというのが目立ちました。テレビで煽られた勢いで鉄器の特性を知らずに購入されたのでしょうから致し方ない反応かもしれません。

しかし、鉄器とはもともとそういうもので、取り扱いには注意と作法が必要です。

 

鉄は錆びるもの

鉄はもともと錆びる金属ですが、空気に触れただけでも錆びます。まして濡れたままにしておけばすぐ赤くなります。あるコメントでは「すぐ錆びたから粗悪な鉄だ」と言う指摘までありましたが、すぐ錆びるのは鉄の純度が高い証です。ニオイについてもあまり長く煮たりしてはニオイが付きますし、漬け置きしてはキツくなります。

 

鉄にサビと鉄臭さはつきものですが、使用後はすばやく乾燥させ、サビが気になったらほうじ茶などで煮立てると元に戻ります。また、なるべくニオイがつかないようにすぐ器に移すことも必要です。中華鍋のような鉄鍋でも、調理してすぐお皿に移さないとおかずが鉄臭くなりますので、すべての鉄器に共通するポイントです。

 

アルミやステンレスなど錆びない合金に慣れすぎて鉄の扱いに不便さを感じる方も多いと思いますが、前述の作法を身につけることが鉄器と長くお付き合いできるコツです。